2008年 08月 04日
Craigieburn |
クレイギーバーンスキー場
クライストチャーチから車で一時間半から2時間ぐらいの山の中にある。国道を外れると、道は狭くすれ違いも出来ないような山の中になる。
このスキー場はクラブフィールドというタイプのスキー場で、簡単に言うと会員制のスキー場でスキークラブが運営している。
でも硬い感じではなく会員は安い料金で、一般は少し高い料金を払えば滑れるわけだ。
ニュージーランドのスキー場の料金は、最近どんどん跳ね上がり、一日券が1万円近くするところもある。
このスキー場は一日6千円と安いほうだ。
そのかわりリフト無し、豪華な設備無しだ。山にスキークラブが山小屋を建て、ロープトゥを設置してスキー場を運営していると想像してもらえればよい。
このスキー場には電話線も電線も通っていない。近所のクラブフィールドには電線も電話線も来ているのに、クレイギーバーンだけはどうやら電化の波から取り残されたらしい。
どうやってやりくりしているかというと、電気は自家発電、電話は無線電話、インターネットは衛星を使っている。
電気は朝7時から10時、夜は17時から22時くらいまで。電話は無線の状態が悪いと雑音がひどいし、インターネットは天気が悪くなると使えなくなってしまうこともある。もちろん携帯も圏外だ。
山にかかっているロープもTバーみたいな洒落た物ではなく、ただの太いロープをトラクターのエンジンでグルグル回している。
そのロープをナッツクラッカーと呼ばれているロープクランプを使い自分ではさんで引っ張られていく。
とんでもない急斜面を登っていくので力尽きたりバランスを崩してロープから外れると文字どおり転がり落ちていく。
滑る斜面も緩斜面は無い。ほとんど中斜面から急斜面だ。ベースが標高1260m、ロープのかかっている最高地点は1811m。さらにここからハイクアップして、ハミルトンピークという1922mのスキー場最高地点まであがることができる。ピークは広いボウル状のところから岩場のシュートまでバラエティーがある。コースによっては両側を岩に挟まれ、場所によってはスキーやボードを横にできないところもある。 普通難しいコースは◆(ブラックダイアモンド)のマークで表され普通は2つまでだがここは◆◆◆まであり注意書きにはSuicidal(自殺的)と書いてある。さらにニュージーランドのスキー場では珍しく森の中を滑ることもできる。
スタッフは常勤のメンバーが10人。
フィールドスタッフと呼ばれる、他のスキー場でいうパトロールとリフト係、さらにボイラーと発電機の面倒を見る外回りの人間が4人。内訳は、フィールドスタッフリーダーのオーストラリア人、こいつはメチャクチャにスキーが上手い。スノーセーフティーと呼ばれる雪崩予報管理担当のカナダ人、レベルストークというカナダのスキー場から来たシャノン。スイスのスキー場でもパトロールをしているドイツ人、マーカス。さらに居候日本人の僕。
スキースクールはイギリス人が1人。
チケット担当にアイルランド人が1人
宿泊施設とスキー場のなかにあるデイロッジ担当は、ニュージーランド人が2人、アメリカ人が1人。
という多国籍なメンバー構成だ。
これを全部束ねているのは、マネージャーのニュージーランド人、ニックさんだ。
彼は、僕がカナダのスキー場で働いていたとき、同じスキー場でスノーセーフティーをやっていた。
この業界もラフティングの世界と一緒でかなり狭い気がする。同じスキー場で働いた人間とばったり出くわしたり、初対面の人間でも共通の知人がいたりした。カナダもニュージーランドも夏はラフティング、冬はスキー場、という人間が多く、いろいろな国、川、スキー場を行き来している人間も多いので、2つの業界を併せるとさらに小さな世界になるだろう。
フィールドスタッフの仕事は、朝5時半に起きて気象観測から始まる。そのデータと天気予報、その日までの雪の状態をあわせて状態を予測し、ワークシートに記入していく。
さらにそれをニュージーランドのスキー場、ヘリスキーオペレーションなどの雪の情報を集め使用している会社が集まって情報交換している、データベースに入力する。この作業は、本来はスノーセーフティーの仕事だが、僕らがレベル2という雪崩の資格を取るために実務経験が必要なので、他の2人と交代でスノーセーフティーの監督の下やらせてもらっている。僕だけ英語がダメなのでみんなに助けてもらいながらやっているけどね。この作業が一番面白い。 お客の子供にビーコンの使い方を教えるマーカス。
このスキー場には、圧雪車もスノーモービルも無い。朝はフィールドスタッフの一人が代表で歩いて、ロープや滑車の点検をしながら斜面を登っていき、山の中腹にあるロープトゥのエンジンをかけに行く。
ロープで上がってきた他のスタッフと合流した後、雪や風などの状態しだいでスキーカットをしたり爆発物を投げたりする。
爆発物は2種類使っていて、パワージェルというダイナマイトみたいなものと、ANFOアンフォとよばれるビーズ状のものがある。なんでもオクラホマシティのビル爆破テロにも使われたらしい。
アンフォは、牛乳などの入っていたプラスチックボトルに詰めてつかう。雪の状態で、2Lボトルにしたり4Lボトルにしたりして破壊力を変化させている。
雪の管理が終わったコースからスキー場がオープンする。
次はロープトゥ乗り場で、初めてロープを使うお客が来たらナッツクラッカーの使い方を説明する。
残りのスタッフでロープが滑車から外れていないか点検したり、安全装置が働いてロープが時々止まるので、ロープトゥを再始動させたりする。
後は雪の少ないところにシャベルで雪出しをしたり、雪が風で飛んでいかないようにするフェンスを掘り出して移動させたりという力仕事だ。日本のスキー場のようにロープやネットはない。あるのは雪崩が出そうなときに出す閉鎖用の看板のみだ。
怪我人はほとんど発生しない。去年、救助用のソリが出動した件数を聞いたら、2件だった。まあお客の数も少ないので、こんなものだろう。新雪がある土曜日、130人くらいのお客の入りで、まあまあの混雑らしい。
夕方4時にロープの運転を止め、スキー場を閉鎖する。ロープが風で滑車から外れないように紐で縛ったり、雪の状態によっては次の日定刻にオープンできるように管理に行って発破したりすることもある。
事務所に帰ってきたところで夕方の気象観測、積雪安定性の評価をして、発電機をまわして終わる。
このあとバーがオープンするので夕食までお客もスタッフもそこでお酒を飲みながらのんびりする。
僕はお金が無いので出来るだけ寄り付かないようにしている。
夕食はスープ、メイン、デザートの順番で出てくる、シンプルだがなかなか豪華なものだ。ちなみに朝食付きで1泊85ドル。
みんな1泊2日などの短い人は少なく1週間ぐらい、またはそれ以上いたりする人が多い。家族で長く滞在する人も多く中流階級の人のリゾートって感じがする。
雰囲気はお客もスタッフもとてもフレンドリー。朝ロープ乗り場に立っていたり、作業していると「おはよう、イワオ」とか「今日は最高だねイワオ」ってかんじで声をかけてくれるが、こっちが名前を覚えていないのがつらい。
みんな日本人より滑る形は格好悪いが悪い雪でもガンガン滑ってくる。うまい。
日本の雪(特に北海道)は有名らしい。いろいろ聞かれる。
日本のパトロールの評判はあまりよくない。他のスキー場のパトロールに「日本で林の中を滑ったら捕まって怒られた。監視カメラまで仕掛けてある」と苦情をいわれたが、それは捕まるお前がノロマなんでしょって思ったが口に出せずに笑うしかなかったり、スキー場は満足に雪崩の管理をしていないってのも言われるが、それもよその国に通用するレベルの管理かって考えるとそんな所はほとんどないし、頑張らなくっちゃいけないね。
せめてパトロールをやっていてもローンが組めるくらいまで、社会的地位を上げなくっちゃなぁと思う。 近辺のスキー場と合同で雪崩救助犬チームとの合同捜索訓練。
いろいろ面白いところだが悩みもある。まず英語での無線交信。ただでさえ怪しいのに無線になるとなお分からない。
日本で無線で「了解」、というのをこっちでは10-4(テンフォー)。分からない場合は、10-9(テンナイン)と暗号みたいな用語を使ってしゃべるが、僕の返事はいつも10-9?だ。
まだまだあるけど面倒くさいからやめとく。
またね。
最近スキー場のパソコンの調子が悪く、関係ないと思うけど個人使用ができなくなり、クライストチャーチまで出てきてやってます。 大聖堂とそのまわりで大きなチェスをするひと。
クライストチャーチから車で一時間半から2時間ぐらいの山の中にある。国道を外れると、道は狭くすれ違いも出来ないような山の中になる。
このスキー場はクラブフィールドというタイプのスキー場で、簡単に言うと会員制のスキー場でスキークラブが運営している。
でも硬い感じではなく会員は安い料金で、一般は少し高い料金を払えば滑れるわけだ。
ニュージーランドのスキー場の料金は、最近どんどん跳ね上がり、一日券が1万円近くするところもある。
このスキー場は一日6千円と安いほうだ。
そのかわりリフト無し、豪華な設備無しだ。山にスキークラブが山小屋を建て、ロープトゥを設置してスキー場を運営していると想像してもらえればよい。
このスキー場には電話線も電線も通っていない。近所のクラブフィールドには電線も電話線も来ているのに、クレイギーバーンだけはどうやら電化の波から取り残されたらしい。
どうやってやりくりしているかというと、電気は自家発電、電話は無線電話、インターネットは衛星を使っている。
電気は朝7時から10時、夜は17時から22時くらいまで。電話は無線の状態が悪いと雑音がひどいし、インターネットは天気が悪くなると使えなくなってしまうこともある。もちろん携帯も圏外だ。
山にかかっているロープもTバーみたいな洒落た物ではなく、ただの太いロープをトラクターのエンジンでグルグル回している。
そのロープをナッツクラッカーと呼ばれているロープクランプを使い自分ではさんで引っ張られていく。
とんでもない急斜面を登っていくので力尽きたりバランスを崩してロープから外れると文字どおり転がり落ちていく。
滑る斜面も緩斜面は無い。ほとんど中斜面から急斜面だ。ベースが標高1260m、ロープのかかっている最高地点は1811m。さらにここからハイクアップして、ハミルトンピークという1922mのスキー場最高地点まであがることができる。ピークは広いボウル状のところから岩場のシュートまでバラエティーがある。コースによっては両側を岩に挟まれ、場所によってはスキーやボードを横にできないところもある。
スタッフは常勤のメンバーが10人。
フィールドスタッフと呼ばれる、他のスキー場でいうパトロールとリフト係、さらにボイラーと発電機の面倒を見る外回りの人間が4人。内訳は、フィールドスタッフリーダーのオーストラリア人、こいつはメチャクチャにスキーが上手い。スノーセーフティーと呼ばれる雪崩予報管理担当のカナダ人、レベルストークというカナダのスキー場から来たシャノン。スイスのスキー場でもパトロールをしているドイツ人、マーカス。さらに居候日本人の僕。
スキースクールはイギリス人が1人。
チケット担当にアイルランド人が1人
宿泊施設とスキー場のなかにあるデイロッジ担当は、ニュージーランド人が2人、アメリカ人が1人。
という多国籍なメンバー構成だ。
これを全部束ねているのは、マネージャーのニュージーランド人、ニックさんだ。
彼は、僕がカナダのスキー場で働いていたとき、同じスキー場でスノーセーフティーをやっていた。
この業界もラフティングの世界と一緒でかなり狭い気がする。同じスキー場で働いた人間とばったり出くわしたり、初対面の人間でも共通の知人がいたりした。カナダもニュージーランドも夏はラフティング、冬はスキー場、という人間が多く、いろいろな国、川、スキー場を行き来している人間も多いので、2つの業界を併せるとさらに小さな世界になるだろう。
フィールドスタッフの仕事は、朝5時半に起きて気象観測から始まる。そのデータと天気予報、その日までの雪の状態をあわせて状態を予測し、ワークシートに記入していく。
さらにそれをニュージーランドのスキー場、ヘリスキーオペレーションなどの雪の情報を集め使用している会社が集まって情報交換している、データベースに入力する。この作業は、本来はスノーセーフティーの仕事だが、僕らがレベル2という雪崩の資格を取るために実務経験が必要なので、他の2人と交代でスノーセーフティーの監督の下やらせてもらっている。僕だけ英語がダメなのでみんなに助けてもらいながらやっているけどね。この作業が一番面白い。
このスキー場には、圧雪車もスノーモービルも無い。朝はフィールドスタッフの一人が代表で歩いて、ロープや滑車の点検をしながら斜面を登っていき、山の中腹にあるロープトゥのエンジンをかけに行く。
ロープで上がってきた他のスタッフと合流した後、雪や風などの状態しだいでスキーカットをしたり爆発物を投げたりする。
爆発物は2種類使っていて、パワージェルというダイナマイトみたいなものと、ANFOアンフォとよばれるビーズ状のものがある。なんでもオクラホマシティのビル爆破テロにも使われたらしい。
アンフォは、牛乳などの入っていたプラスチックボトルに詰めてつかう。雪の状態で、2Lボトルにしたり4Lボトルにしたりして破壊力を変化させている。
雪の管理が終わったコースからスキー場がオープンする。
次はロープトゥ乗り場で、初めてロープを使うお客が来たらナッツクラッカーの使い方を説明する。
残りのスタッフでロープが滑車から外れていないか点検したり、安全装置が働いてロープが時々止まるので、ロープトゥを再始動させたりする。
後は雪の少ないところにシャベルで雪出しをしたり、雪が風で飛んでいかないようにするフェンスを掘り出して移動させたりという力仕事だ。日本のスキー場のようにロープやネットはない。あるのは雪崩が出そうなときに出す閉鎖用の看板のみだ。
怪我人はほとんど発生しない。去年、救助用のソリが出動した件数を聞いたら、2件だった。まあお客の数も少ないので、こんなものだろう。新雪がある土曜日、130人くらいのお客の入りで、まあまあの混雑らしい。
夕方4時にロープの運転を止め、スキー場を閉鎖する。ロープが風で滑車から外れないように紐で縛ったり、雪の状態によっては次の日定刻にオープンできるように管理に行って発破したりすることもある。
事務所に帰ってきたところで夕方の気象観測、積雪安定性の評価をして、発電機をまわして終わる。
このあとバーがオープンするので夕食までお客もスタッフもそこでお酒を飲みながらのんびりする。
僕はお金が無いので出来るだけ寄り付かないようにしている。
夕食はスープ、メイン、デザートの順番で出てくる、シンプルだがなかなか豪華なものだ。ちなみに朝食付きで1泊85ドル。
みんな1泊2日などの短い人は少なく1週間ぐらい、またはそれ以上いたりする人が多い。家族で長く滞在する人も多く中流階級の人のリゾートって感じがする。
雰囲気はお客もスタッフもとてもフレンドリー。朝ロープ乗り場に立っていたり、作業していると「おはよう、イワオ」とか「今日は最高だねイワオ」ってかんじで声をかけてくれるが、こっちが名前を覚えていないのがつらい。
みんな日本人より滑る形は格好悪いが悪い雪でもガンガン滑ってくる。うまい。
日本の雪(特に北海道)は有名らしい。いろいろ聞かれる。
日本のパトロールの評判はあまりよくない。他のスキー場のパトロールに「日本で林の中を滑ったら捕まって怒られた。監視カメラまで仕掛けてある」と苦情をいわれたが、それは捕まるお前がノロマなんでしょって思ったが口に出せずに笑うしかなかったり、スキー場は満足に雪崩の管理をしていないってのも言われるが、それもよその国に通用するレベルの管理かって考えるとそんな所はほとんどないし、頑張らなくっちゃいけないね。
せめてパトロールをやっていてもローンが組めるくらいまで、社会的地位を上げなくっちゃなぁと思う。
いろいろ面白いところだが悩みもある。まず英語での無線交信。ただでさえ怪しいのに無線になるとなお分からない。
日本で無線で「了解」、というのをこっちでは10-4(テンフォー)。分からない場合は、10-9(テンナイン)と暗号みたいな用語を使ってしゃべるが、僕の返事はいつも10-9?だ。
まだまだあるけど面倒くさいからやめとく。
またね。
最近スキー場のパソコンの調子が悪く、関係ないと思うけど個人使用ができなくなり、クライストチャーチまで出てきてやってます。
by iwaobum
| 2008-08-04 11:15
| ニュージーランド冬